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2007年2月23日 (金)

10.第136回芥川賞受賞作品

青山七恵著 「ひとり日和」

本年度芥川賞受賞作品。

出版社/著者からの内容紹介 人っていやね......人は去っていくからね。 20歳の知寿が居候することになったのは、 母の知り合いである71歳・吟子さん の家。 駅のホームが見える小さな平屋で暮らし始めた私は、キオスクで働き、 恋をし、吟子さんとホースケさんの恋にあてられ、少しずつ成長していく。 選考委員が絶賛した第136回芥川賞受賞作。

リズムのある文章でぐいぐい読ませてしまう。

主人公が吟子さんとの二人暮しで成長してく過程が淡々と過ぎる四季にのせて綴られる。盗癖を卒業し、成長し旅立っていく知寿の姿が、移りゆく四季と変わらぬ駅のたたずまいとの中から浮かび上がってくる様は見事でした。

でも、“私”の未来は決してその淡々とした流れとは相反するような平坦でない予感も漂わせつつ。

2月22日読了

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2007年2月20日 (火)

9.井坂幸太郎著 「オーデュボンの祈り」

内容(「BOOK」データベースより) コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる!第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伝説のデビュー作、待望の文庫化。

私の稚拙な感性ではとてもついていけずに^^;、とっかかりにとても苦労した。昨年秋の義母の大病の折の帰省の新幹線で読もうと用意したが、その時の心境にもよるのだろうが、とても受け付けずに数ヶ月寝かせていた本。

年明けからトイレにおいて^^;;;トイレタイムでだけ読み進めていた。次第にトイレに入るのが楽しみになり・・(^_^;)、毎朝、トイレタイムはどっぷり不思議なカカシの世界に浸っていた。

後半はぐいぐい読ませる。読了したとき、私の荻島への旅が終わったような寂寥感が漂った。そして、なんだかとってもお名残惜しいのよね~。

井坂幸太郎はまたぜひ次の作品も読まなくちゃね。

2月20日読了

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2007年2月16日 (金)

8.山田詠美著 「風味絶佳」

 

出版社 / 著者からの内容紹介
「甘くとろけるもんは女の子だけじゃないんだから」。孫にグランマと呼ぶことを強要する祖母・不二子は真っ赤なカマロの助手席にはボーイフレンドを、バッグには森永ミルクキャラメルを携え、70歳の今も現役ぶりを発揮する――。
鳶職の男を隅から隅まで慈しみ、彼のためなら何でもする女、「料理は性欲以上に愛の証」とばかりに、清掃作業員の彼に食べさせる料理に心血を注ぐ元主婦など、お互いにしかわからない本能の愛の形を描いた珠玉の6篇を収録。
 山田詠美が作家生活20年目に贈る贅を尽くした最高傑作。

小説は、私にとって、ままならない恋そのものである。

山田 詠美(あとがきより)

内容(「BOOK」データベースより)
「甘くとろけるもんは女の子だけじゃないんだから」70を超えてもグランマは現役ぶりを発揮する。20年目のマイルストーン的作品集。

初めての山田詠美の作品。
一言の後ろにある風景が浮かぶ。一つの文章からイメージが膨らむ、そんな文章。

一番生活に密着する部分を請け負う仕事、そしてある意味一番敬遠されがちな仕事を持つ人たちの人間模様が、一番また身近な食を通して語られる。その微妙な味付け加減がこれまた絶佳でした。

2月13日読了

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2007年2月13日 (火)

7.林真理子著 「野ばら」

信じられない・・・ この本のキャッチコピー “現代版細雪”
嘘だろう~~。

持ち上げておいて、要するに読者の大多数はこうく境遇にはないという羨ましい設定にしておいて、落とすことで読者の共感を呼ぶ。なんだかさもしい気分になってしまう。

娘がお友達から借りてきたので、ついでに読ませてもらったけれど・・・。

2月11日読了

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2007年2月 7日 (水)

6.石田衣良著 「電子の星」 -池袋ウェストゲートパーク IV-

出版社 / 著者からの内容紹介 ネットで仕掛けられたラーメン戦争、人体損壊DVDの謎を追う負け犬ネットおたく……池袋のストリートをマコトが事件解決に走る

内容(「BOOK」データベースより)
アングラDVDの人体損壊映像と池袋の秘密クラブの関係は?マコトはネットおたくと失踪した親友の行方を追うが…。通り魔にギャングの息子を殺されたジャズタクシー運転手に告知された悲惨な真実とは?「今」をシャープに描く、ストリートミステリー第4弾。切れ味、スピード、さらに快調。

マコトは相変らず元気でした。ホッとするの。
いつもIWGPを読むと自分があの池袋の果物やさんの前に立っている気がする。

短編で、最初から一連の流れになっているってのが、私ぴったりで。途中でやめられるし、続けるとすっぽりその世界に浸れるのが楽しい。

少々読みたくない描写があったけれど、それもオタクで負け犬のテルが爽やかに旅立って行くために仕方ないか。

2007年2月6日 読了

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2007年2月 5日 (月)

5.田辺聖子著 『姥ざかり花の旅笠』―小田宅子の「東路日記」

内容(「BOOK」データベースより) 江戸、天保の頃。筑前の商家のお内儀達がお伊勢詣りに出立する。一行は、仲良し五十代女四人と荷物持ち兼ボディガードの男三人。家業を子に譲ってから、和歌を学び、古典の教養溢れる女達の旅はエネルギッシュ。伊勢参宮から、信濃の善光寺、ここまでくれば日光詣りもと突き進み、江戸見物から東海道、京・大坂へ、海路陸路の五ヶ月八百里一。生気躍動する女旅の豊かな愉しさが甦る知的冒険お買い物紀行。第八回蓮如賞受賞作品。

年末の帰省のときのたびの友にしてから、ひと月かけてじっくり読む。2月2日読了。

出だしは自分に学がないためになかなか入り込めなかったのだけれど、浅学の私でさえも、ぐいぐい一緒に旅をしている気分にしてくれる田辺さんの筆力はさすが!そして、この本をお書きになるために、田辺聖子さんがどれだけ勉強されたか、真摯に受け止めなくてはと思う。

大阪から奈良への旅のくだりは、自分の実家の前の道を宅子さんも通ったんだと感無量。

5ヶ月もかけて3千キロ以上と踏破した、このおばさんたちのたくましさ、教養の深さ、脚力、全てが素晴らしい。とても無理だけれど、もう少しして、女同士でこんな旅ができたらいいなぁとしみじみ思った。

ただ、江戸に興味がわいて、いろいろな本も読んだけれど、ここの出てくる、イサベラ・バードの著書の引用は、江戸の暗部というか戦前までの暗部を克明に浮き出されて、衝撃的であった。当然、知っていたことではあるが、江戸に親しむと言っても、こういうところから目をそらして楽しんでいた感が私にあったので。

江戸の華やかな面の裏側にもいつも目を向けなくてはいけないと改めて思った。

とりあえず、いったことがない善光寺。発表会が終わったら早速いってこようと決心。

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2007年2月 2日 (金)

3.4.乃南アサ著 『鎖』 上・下

上:内容(「BOOK」データベースより)
東京都下、武蔵村山市で占い師夫婦と信者が惨殺された。音道貴子は警視庁の星野とコンビを組み、捜査にあたる。ところが、この星野はエリート意識の強い、鼻持ちならぬ刑事で、貴子と常に衝突。とうとう二人は別々で捜査する険悪な事態に。占い師には架空名義で多額の預金をしていた疑いが浮上、貴子は銀行関係者を調べ始める。が、ある退職者の家で意識を失い、何者かに連れ去られる。

下:内容(「BOOK」データベースより)
貴子が目を覚ますと、廃屋に監禁され、鎖で手足を縛られていた。一方、行方不明の貴子を救出するため特殊班が編成され、かつて彼女と組んだ滝沢刑事も加わる。やがて犯人らの巧妙な現金奪取計画が明らかになり、貴子も犯人の中の女性を説得し、懸命に本部との連絡を試みる。が、特殊班はなかなか潜伏先に辿り着けない。ついに貴子の気力・体力も限界に―。傑作『凍える牙』の続編。

魅力的は主人公の音道貴子。彼女の登場する作品は思わず手にする習慣が。それが、昨年、間違えて先に『未練』を読んでしまった。ぜひその前のも読まねばということで。
2月1日読了。
ちょっと、で出しがもたつく感があったのだが、そこはぐいぐいどんどん引き込まれていく。
星野のむかつくキャラクターが一層華を添える^^;
終盤は、息詰まる緊迫感でさすが。

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